【糸】意味と成り立ちを詳しく解説!「糸」は何の糸なの?【小学生の漢字】【読み方】

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この記事は
・漢字に興味がある方
・漢字を深く勉強をしたい方
・意味の由来やなりたちを詳しく知りたい方
に向けて書かれています。なるべく専門用語などは使わず噛み砕いて解説しているので、軽い気持ちで覗いてみてくださいね

今回の漢字は「糸」だよ

 

 

【糸】6画 シ・いと
①いと。生糸。蚕が吐き出すきぬいと。原糸
②いと。よりいと。撚糸。織物の原材料となるいと

今回は以上の意味について解説します。(番号は解説の順番になっています)

 

「糸」ってどんな漢字?

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「糸」は生糸「絲」は撚糸

さて、今回見ていく「糸」は象形文字です。象形文字とは「穴」や「門」のようにそこにあるものの形をそのまま漢字として表した文字のことを言います。
「穴」は地下室への入り口を「門」は扉が付いている門をそれぞれ漢字にしたものですが、「糸」はいくつかの糸を合わせた生糸を表しています。


ここでいう糸とは、毛糸や縄のような太いものではなく、蚕の繭から取れたいわゆる生糸

 

ここから少し生糸に関する周辺知識について解説します。「糸」の成り立ちに大変関わってくるので、少しお付き合いください

 

生糸とは繭から取れた糸をいくつか合わせることで1本の糸にしたもののことを言います。

生糸は非常に細く繊細な糸であるため、何本かまとめなければ糸として使用することができないのです。

ちなみにこの生糸を作っていたのが日本の世界遺産である「富岡製糸場」です。

「製糸」とは蚕の繭から生糸を取り出す作業のことをいいます。富岡製糸場ではその作業を機械化し少ない人数で大量生産していました。

 

そしてこの生糸をより合わせたものがよりいと(きぬいと)と呼ばれるものになります。

「よる」とは2本以上の生糸を合わせて両端をねじり合わせることで、その糸を頑丈にし、糸の太さを均一にする手法のことを言います。

生糸を何本かまとめただけではほどけてしまうため捩じることでほどけないようにしていたことが始まりでしたが、ねじり方や糸の組み合わせに工夫が施され現在のような手法として確立したそうです。

よりいとは撚糸(ねんし)とも呼ばれています。「撚」はひねると読むので意味としては同じことです。


現在ではきぬいとによる織物をシルクと呼ぶことが一般的で、中国や日本でも古くから大変な貴重品として流通していました。

 

なるほど

 

そんな「糸」はもとの漢字を「絲(シ)」のように書きます。
「絲」は見た通り「糸」を2つ組み合わせた会意文字で、古代中国では絹織物の原料となる撚糸のことをすべて「絲」と表記していました。

 

そのため「糸」は撚糸になる前の糸、すなわち生糸のことを指しており表記にはこの漢字が使用されていたのです。

 

「林」を構成しているのが1本の「木」であるのと同じように「絲(撚糸)」を構成しているのは1本の「糸(生糸)」であるという解釈で間違いないでしょう。

 

現在では撚糸も生糸もすべて「糸」の字が表し、「絲」は「糸」のもとの漢字という立ち位置になっています。きぬいと以外の糸ももちろん「糸」で表します。

 

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「糸」の古代文字(甲骨文字


「糸」が糸を集めたものであることを踏まえた上で、古代文字を見てみましょう。


正確に読み取ることは難しいですが、なんとなく2本ないし3本の細い糸が集まっている様子がわかりますよね。これが生糸になります。

 

「絲」はこれを2つ並べていることから、まさしく生糸をよっている様子を表しているというわけなのです。

 

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「糸」の部首は「糸」

「糸」の部首は「糸」です。

 部首は漢字を分類するにあたって最も重要となる構成要素を指しています。

例えば「木」は1本の木の形をそのまま漢字にした象形文字です。「木」の中で最も重要といえるのは「一」でも「│」でもなく、「木」そのものを表している「木」なります。そのため「木」の部首は「木」ということになるのです。

 

同じく「糸」もいくつかの生糸が集まっている様子をそのまま漢字にしているものであるため「糸」自体が部首であるといえるのです。

 

「糸」はその後糸や糸のように細いものを表す漢字の部首に使用され、糸・糸へん部を形成していくことになります。

 

糸部って地味に多いよね

しかもどれも意味が難しいんだよね。木部ほど単純ではないよ

 

「玄」も「素」も染色の様子

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「玄」は糸を黒く染めたもの

ここまでの解説では特に関係がありませんでしたが、糸や織物に関して日本で特になじみ深いものが染色です。

 

日本では染色が非常に盛んで歴史の教科書などでもたびたび技法が登場しますよね。藍染や絞り染めなどどういうものなのかわからずとも名称だけは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

 

ところで糸を染めている様子を表している漢字として「玄」というものがあります。

「玄」は「くろ」という訓があり、現在では黒色と同義のものとして使用されている漢字です。

 

「玄」にはよく見ると「糸」の上側である「幺(いとがしら)」の字が付いていますね。「幼」などにみられるこの「幺」は細い生糸から連想して、細いや小さいという意味があります。

なのでここでは「幺」は細い糸を表現するために使用されています。

 

上側にある「亠」の形はその糸を持つ、あるいは何かにぶら下げている様子で、「玄」はその糸を染汁(糸や布を染めるための液体)が入った鍋につけているところを描写しているのです。

 

これによって黒色に染まった糸の色を「玄」といい、「玄」には「くろ」という訓がつけられているのです。

 

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「玄」の古代文字(篆書


古代文字を見てみるとこのような形になっています。「亠」の部分を除けば下側はほぼ「糸」の古代文字と同じであることがわかりますね。
「玄」はこの部分が黒色に染まっているのです。

 

ちなみに玄という色は完全な漆黒というわけではなく、黒に若干赤が混じった色になっています。

玄よりも少し赤みが増した色を「燻(クン・そひ)」、赤みが消えほとんど黒になった色を「緇(ソ)」といいます。

これらは染汁に何回糸をつけたかで変わってくるそうです。

 

「素」は糸が染まらなかったところ

一方で染汁が入った鍋につけた糸の中で黒色に染まらなかった部分、つまり「亠」の部分のことを指している漢字というのが「素」にあたります。

 

「亠」は糸を持っている部分であるため、染汁にはつかりきらず白いままの状態で残るわけですね。

 

このことから「素」には「しろ」という訓がつけられ、現在では「白」と同義の漢字として使用されています。

 

また「亠」の部分が糸の根本(もと)であるということから「素」には「もと」という意味があります。

これは「素肌」や「素材」などそのものがもっている本来の姿のような意味となることからまさしく糸が白いままであることを示しているのです。

 

これをみると、物事が達者で技術が優れている人を指す「玄人」と訓練を受けておらず本職でない人のことを指す「素人」は色だけでなく、漢字の成り立ちの上でも対義語となっているのがわかりますね。

 

ちなみによく女性が口にする「わたしスッピンだからヤバーイ!」の「スッピン」は漢字で書くと「素嬪」のようになります。「嬪(ヒン)」は「別嬪」などにみられるように非常に美しい女性のことを指す漢字です。

なので「わたしスッピンだからヤバーイ!」は翻訳すると「わたし素顔のままでも美人だからすごーい!」ということになってしまいます。


日本語はちゃんと意味を知っていないととんでもないことになってしまいますので注意して使いましょう。

 

「素嬪」がだめならじゃあなんて言えばいいの?

…ノーメイク

 

 まとめ

  • 「糸」は6画の象形文字。部首は「糸」。
  • 「糸」はもとの漢字を「絲」と書き撚糸のことを指している。「糸」は「絲」を構成するものとして生糸を指している。
  • 「玄」は糸を黒に染めているから「くろ」の訓がある。
  • 「素」は糸が染まっていないから「しろ」の訓がある。

 

「玄」と「素」の部分はしっかり覚えておこ

 

おわりに

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今回は「糸」という漢字を見ていきました。

「糸」と「絲」の解説に関して我ながらかなり苦戦してしまいました。

 

本文には出てきていませんがわたしは撚糸と練糸が同じものだと勘違いしていたことからどうしても漢字の解説が理解できず、何時間も調べものに費やしてしまいました。

撚糸は先にも書いてある通りよりいとを作る工程なのですが、練糸はよりいとの膜や汚れを除去することで絹に光沢を出したもののことを言うそうです。

 

なので私たちがイメージするいわゆるシルクの生地はこの工程を施したものであるということなのですね。(わたしたちが普段目にしているシルクはおそらく化学繊維的なやつですが)今回で一つ勉強になりました。

 

富岡製糸場もそうですが、日本には鹿児島紡績所という世界遺産もあり、幕末から明治期にかけての日本の製糸、紡績の産業は非常に盛んだったのだなと改めて今回思いました。

 

作業工程や歴史を知っていなければ理解できない漢字というのは一定数存在しますが、難しい分その周辺知識も得ることができるのでとても面白いのではないでしょうか。

わたしはそう思います。

 

「糸」が「遊」ぶと書いて「糸遊(かげろう)」と読むよ

トンボの?

いや現象のほうだよ。確かにそういわれてみれば糸が何本かちらちら~ってなっているように見えるかも?

それを遊ぶって表現した人って偉大だね

参考資料

生糸と絹と織物

「白川フォント」

 

 

 

全訳漢辞海 第四版
人名字解
新明解国語辞典 第七版
新漢和大字典 普及版 (一般向辞典)

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