【小学六年生の漢字】《樹》:つくりにある「尌」って何? 「樹」と「木」の使い分け方は?

この記事では小学6年生の配当漢字「樹」について紹介しています。
「樹」のつくりにある「尌」は何を表しているのか、「木」との違いは何なのかなど、漢字の構成やなりたちから解説しています。
是非ご自分の目で確認してみてくださいね!

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「樹」ってどんな漢字?

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【樹】ジュ・き・うえる・たてる『常用字解』第2版より

さて、今回見ていく「樹」は16画の会意形声文字です。形声文字とは象形文字に音を表す漢字を付けることで新しく作られた漢字のことを言います。「形」に「声(音)」を足しているということです。「樹」の場合は「木」という象形文字に「尌(ジュ)」を組み合わせた漢字であるため、「尌」という字が「樹」の音になっていますまた後で詳しく書きますが、「樹」は会意形声文字であることから、「樹」では「尌」の動作や意味が使用されています。

 

とはいえ「尌」は見慣れない漢字であると思います。ここで少し「」について見ていきましょう。

尌」の左側にある「壴(コ)」という字は「鼓(つづみ)」の左側の文字と同じものです。「壴」はこの字ひとつで「鼓(つづみ)」を表しており、右側についている「支」や「寸」はその鼓に対する動作を指しています。

鼓は簡単にいえば太鼓のような楽器全般を言い、大きい小さいにかかわらず面を打って音を鳴らすものすべてをいいます。「壴」はそのような鼓をかたどった象形文字となっているのです。

また、「寸」は指を伸ばした右手を漢字にしたものです。


このことから「尌」は手で鼓をたたいている様子を表した漢字であることがわかります。

 

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「樹」のなりたち(篆書

 

「尌」が手で鼓をたたいている様子であることを踏まえたうえで、「樹」の古代文字を見てみましょう。


これは篆書の字形ですが、現在の漢字と変わらず「木」の横に「尌」が付いている構成になっています。「寸」の字は現在よりも手であることがわかりやすくなっており、これが「壴」の部分をたたいている動作をしているのです。

 

つまり「樹」は木のそばで鼓をたたいている様子を表している漢字、ということになります。

 

木のそばで鼓をたたいている? どういうこと?

それはまたのちほど

 

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書き順はこのようになります。
ちなみに「壴」の部首は「士(さむらい)」であるため、「豆」のような字の上側は「土」ではなく「士」になります。

 

「末」と「未」のように長さが異なるだけで、別の漢字になってしまうのですからとても厄介ですよね。しかし形が似ていても、なりたちが全く異なるのが漢字の面白さでもあります。

「樹」は木のそばで鼓をたたいている

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「尌」は「壴」と「寸」で構成され、手で鼓をたたいているところを表していることはわかりました。ですが、なぜ「尌」が使われている「樹」は「樹木」など木を表しているのでしょうか。

 

それを解き明かすためには、そもそも「尌」が何のために鼓をたたいているのかが重要になってきます。

 

例えば、良いことや賞賛するという意味がある「嘉」という漢字を見てみましょう。この字は「壴」と「加」を組み合わせたものです。「嘉」は簡単に言うと農作物がきちんと実るように祈る儀式をしているところを漢字にしたものです。「加」に関する説明は省略しますが、ここでは、儀式の間に鼓を鳴らすことで祈りを神様に届けているということを示しています

 

また、「喜」はどうでしょう。この漢字は「壴」と祈りを発する「口」を組み合わせたものになっています。これは祭りや儀式の最中に鼓をたたくこと神様は喜ばれるので、鼓をたたきながら祈っているというところから「よろこぶ」という意味になりました。つまりここでも鼓によって神様に祈りを届けているのです。

 

このように「壴」は儀式の際にたたかれる鼓のことを指しています。儀式は多くの場合植物がきちんと育つことを祈るために行われるものです。そのため「尌」は植物を生長させたいということを神様に祈り届けるために、鼓をたたいているといえるのです。

 

つまり、「樹」は木が育つように鼓をたたいて祈っている様子を表しているということになります。そして、祈りによって生長した木はいつまでも生き続け、立ち続けていることから「樹」は木の中でも立って生きている木、すなわち「立ち木」や「樹木」のことを指すようになったのです。


このことから「樹」は樹木を表す漢字となり、現在では祈りによって生長した木だけでなく、立ち木や樹木全般の意で「樹」は使用されていますなので「樹」は生きている木すべての総称といって差し支えないといえるでしょう。

 

木が生長してほしいから鼓をたたいていたんだね

そういうことだね。昔の人たちはまだ科学や生物学を知らないから、祈るしかなかったのかも。でも祈ったおかげで大木になったと思えば、「木」に「尌」を加えた漢字を「立ち木」としたくなるのも何となくわかるよね

 

「樹」における「立ち木」という意味はその後、「樹芸」など「植える」という意味や、「樹立」など物事を定め「たてる」という意味へと変化していきました。

この意味は「樹」にある「うえる」や「たてる」の訓にも表れています。

「樹」は立っている木で「木」は木のすべて

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「樹木」ということばがあるように、「樹」と同じくツリー(木)を表す漢字としては「木」がありますね。では「樹」と「木」の違い、そして使い分け方はどのようになっているのでしょうか。

 

結論から言えば、「樹」は生きて立っている木のみを指し、「木」は木が関わるものすべてを指しています。

 

例えば、先ほどから何度か登場している「樹木」は、「樹」も「木」も使われています。「樹木」は特に植わっている木を表す熟語であるため、生きて立っているの意になります。
また、「木陰」や「樹陰(ジュイン)」は、どちらも立っている木の陰ということです。こちらも生きてなければ立っていいられないため、「樹木」と同様の使用例になるでしょう。「木」でも「樹」でも特に違和感はありませんね。


このように「木」は「樹」と同じように生きている木や立っている木を表すことばにも使用することができます

 

しかし「木刀」や「木の椅子」「木琴」など木製の道具を表すものになると「樹」はとたんに使用されなくなります。「樹刀」とは言いませんし、「樹の椅子」とも言わないのです。もちろん「樹のぬくもり」や「樹の質感」なんて言い方もしませんよね。

 

「樹」は道具であるなしにかかわらず、生きて立っている木でなくなったものには使用することができないというわけなのです。


そういった意味で、生きて立っている木にも木製の道具にも総じて使用できる「木」は木が関わるものの総称といって差し支えないといえるでしょう。

これらの事柄はざっくりと以下のように整理することができます。

 

  • 「木」:生きている木を含めた、木が関わるものすべての総称。「木馬」や「植木」などに使用されている。
  • 「樹」:生きている木すべての総称。「果樹」や「植樹」などに使用されている。

 

当然「樹製」とも言わないね

その通り!

 

 

まとめ

  • 「樹」は16画の会意形声文字。
  • 「尌」は「壴」と「寸」で構成され、手で鼓をたたいているところを表している。
  • 「樹」は祈りで生長し、立っている木を指していることから「樹木」や「立ち木」という意味がある。
  • 「木」は生きている木を含めた、木が関わるものすべての総称であり、「樹」は生きている木すべての総称。
  • 木製の道具などは生きて立っている木ではないため「樹」は使用できない。

 

これで「樹」と「木」の違いは覚えたぞ!

 

 おわりに

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「樹」には「たてる」や「うえる」などの意味がありますが、今回の記事ではあまりそこに重点はあてませんでした。なぜならばそれらの意味はすべて木が立っていることからきている意味であり、そこに行きつくためには必ず鼓のくだりを知らなければならなかいからです。逆に言えば、鼓のくだりを知ってさえいれば、その後の「樹」の意味はおおかた道筋を予想できるようになっています。

 

今回の「樹」のように漢字のなりたちには祈りや儀式、占いなど呪術的なことが多分に含まれているものがあります。先人の方々はそれらを大真面目に行い、大真面目に信じていたのです。

 

もちろん現在でも大嘗祭であったり、仏教式の葬式であったりと儀式めいたものは多く残っています。しかしそうであっても、理解できない動作や習慣が漢字のなりたちには出てくるのです。

 

そのあたりをどのようにかみ砕いて、理解していくかということが漢字を勉強する方々の課題でもあり、記事を書く私の課題でもあるかもしれませんね。

 

というわけで今回は「樹」という漢字を見ていきました。ここまで読んでいただきありがとうございます。ではまた次の漢字で!

 

「榕樹」とかいて「ガジュマル」と読むんだって。めいちゃんガジュマルって知ってる?

知ってるよ。精霊がいる木だよね。…精霊の名前は何だったかな?

キジムナーだよ

…かわいい

 参考資料

「白川フォント」

 

 

 

 

 

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