【小学五年生の漢字】《制》:「製」との違いは? なんで「刂」があるの?

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【制利】

突然ですが、これで「セリ」と読むそうです。
別の漢字で書くと「芹」となる「セリ」です。

 

わたしもこの熟語は最近初めて見たので驚きました。
「セリ」には「芹」「䓅」「菦」などこれを意味する漢字がたくさんあるのです。


この期に及んで熟語まであるとは、「セリ」はどの地域でもよっぽど愛されていたということでしょうか。

 

「制」も「利」も植物を切る様子を表した漢字なので、なんとなくセリには刈り取るイメージがあったのではないかと漢字から想像できます。

 

ちなみにわたしはパセリは食べる派です。

ぱっせりnileによるPixabayからの画像 


というわけで今回は「制」という漢字を見ていきます。

 

 

「制」ってどんな漢字?

だんだんSasin TipchaiによるPixabayからの画像 

 

「制」は8画の会意文字です。(会意文字が分からない方はクリックしてみてください)


「制」は「未」と「刀(刂)」を組み合わせた漢字です。

「制」の左側、つくりとなる部分は「未」が変化した形になっています。

 

「未」は木が生い茂っている形を表す漢字であり、「刂」はこの場合「鋏(ハサミ)」を表しています。

つまり「制」は生い茂った木々の伸びている部分(枝)を鋏で切り整えている様子を表しているということです。
このように伸びた枝や乱れた木々を整えることを剪定するといいます。

 

「制」はすなわち剪定している様子を表した漢字なのです。

 

かきじゅん

 

書き順で確認してみると6画目までが「未」を表す漢字になっています。


「未」に「刂」が添えてあるという、非常にシンプルな会意文字であるため、成り立ちを覚えてしまえば非常にわかりやすい漢字といえます。

 

「刂」は「鋏」のことなの? 刀じゃなくて?

そう解釈されているね。「刂」は刃物全般を表す部首だからって伸びた枝を刀では切らないと思うなぁ

 

「未」は本来木が生い茂っている様子を表している漢字ですが、「制」の場合多くの資料において「未」は果実が成っている様子を表しているとも書かれています。

つまり、果実に鋏を添えそれを捥(モ)いでいる様子も表すとされているのです。

 

果実を捥ぐということは、その果実の成長を止めるということです。
このことから「制」にはとどめるという意味がありました。

しかし、この使用法に関する用例はなく、現在ではこれに近い意味はあるものの由来が異なるものになっています。

 

上にもある通り、「未」は本来木が生い茂っている様子を表している漢字ですが、「制」における「未」の意味としては果実を表す旨が各資料に掲載されています。しかし「未」が果実を表す場合「制」が持つその他の意味には繋がっていかないように感じます。そのためここでは「未」はあくまでも生い茂った木を表すものとして解説していきます。

 

 

「制」は生い茂った木に鋏を添えている漢字ですが、幹に斧を添えている漢字として「枚」があります。 是非チェックしてみてください。

 

 

「制」と「製」の違いは明確

にわrichard91robertsによるPixabayからの画像 

 

「制」の下に「衣」がついた漢字に「製」があります。
「制」と「製」、どちらにもつくるという意味があります。

 

これによって、この2つの漢字は特に「制作」なのか「製作」なのかという疑問をもたらします。


これに関して『新明解国語辞典』第7版では以下のように記されています。

 

【制作】絵画・彫刻などの芸術作品を個人が、映画・演劇・放送番組などを何人かが協力して作り上げること。
【製作】道具・機械などを使って型にはまった物を(大量に)作ること。

 

つまり、娯楽となるものを作り上げることを「制作」道具や生活にかかわるものを生産することを「製作」という形で区別しているのです。

 

そもそも「製」のなかの「衣」は服を作るという意味があります。
「製」は形成文字であるため「衣」の上にその文字の音を表す記号として「制」がついているのです。(形成文字が分からない方はクリックしてみてください)
なので「製」という字にももとからものをつくるという意味がありました

 

なので「制」におけるつくるという意味はこの「製」から逆輸入される形で付いたものなのです。

なぜ「制」にもつくるという意味が付与されたのかは不明です。しかし現在ではこの2つの漢字は上記のような明確な使い分けがあるのです。

しゃつMikesPhotosによるPixabayからの画像 

 

「製」の下の「衣」は衣食住に代表されるように生活に欠かせない道具となっています。
なので、

 

生活にかかわる事柄を表す漢字を「製」、生活の道具を作ることを「製作」


生活以外の事柄を表す漢字を「制」、生活の道具以外の娯楽を作ることを「制作」

 

といったように「衣」を生活の道具と捉え、その有無によって使い分けを覚えることも可能かもしれません。

 

これはあくまでも私の解釈であるため、成り立ちとは関係ありません。
使い分ける際の覚え方として、ひとつ助けとしていただければと思います。

規「制」強「制」従えるの意

くろねこ
DanaTentisによるPixabayからの画像 

 

「制」は木々を鋏で整えている様子を表していることは先に述べた通りです。

 

「制」は木々を切ることによってその木の形を整えていることから物事の決まりを整えることを表しました

そのため「制」にはさだめきまりという意味があります。

このきまりという意味は物事の決まりや規律を定めるという意味での「規制」や国の法令を定めるという意味での「制度」、あるいは「制限」や「制約」などに使われています。

これらの「規制」の発布は物事の秩序を守るための決まり事です。


しかし、歴史上ではしばしば「規制」を強化することによって圧政となってしまうことがあります。これは決まりごとによって、国が国民を力でねじ伏せて、自由を奪ってしまうということです。

秩序を守るためではなく、言うことを聞かせるために「規制」しているのです。
このような様子から「制」には強い力で抑えつけるという意味があります。
「制圧」などにこの意味は用いられており、「制限」や「制約」などとは明確に意味が異なります

 

ですが、そのような圧政には反発し、国が決めた規律を乱す人がいます。
そのような人には国から「制裁」がなされました。
このように抑えつけるという意味は、規律を守らない者に与えられる圧力といった形としても表れているのです。

 

一方、国民を力でねじ伏せ自由を奪った国は国民を思うがままに操ることができるようになります。

人々を操縦できるようになるのです。
このことから「制」には「強制」などにある強い力で無理に従わせるという意味や、「制御」などにある操縦する、使役するという意味が加わってきました。

 

このように「制」は整えるという意味がエスカレートした結果、抑えつけるや従わせるなどの意味へと変じていったのです。

これらの例はあまりにも暴力的な抑えつけるの例ですが、現在では「制覇」や「制勝」など他を抑えて勝利するという意味にも使用されています。

 

上記の内容を以下に整理すると、

 

整理する→規律を正す→圧力を加える→従わせる


ということになります。
「制定」や「制御」は現在でも多く聞くことばですが、おおもとの意味は全く残っていないということが分かります。


しかし、ここまで見てきたようにこれらの意味は繋げて覚えることができるのです。
ですが、ここで注意しておきたいのは「制」自体には整えるという意味はないということです。あくまでその様子を表しているというだけなのです。

 

動作と意味が伴っていない漢字は多くあるように思います。そういった漢字を探してみるのも面白いかもしれませんね。

 

暴力的な意味もあるけれど、何となく歴史を感じるなぁ

そうだね、「規制」より下の意味は国の動静をそのまま表しているように見えるね。

 

まとめ

  • 「制」は8画の会意文字。
  • 「制」は枝を鋏で整えている様子を表す。
  • 「制」と「製」は、娯楽となるものを作り上げることを「制」、道具や生活にかかわるものを生産することを「製」というように区別できる。
  • 「制」のつくるという意味は「製」からきている。
  • 「制」の意味は「整理する→規律を正す→圧力を加える→従わせる」というよう変わっていっている。

 

難しい意味もあるけれど頑張って覚えるぞ!

 

おわりに

くろねこHelga KattingerによるPixabayからの画像 

 

漢字の意味の変化は一見ばらばらであるように見えて実は一貫しています。
意味が2つあるように見えても、多くの場合は同じ系譜をたどっているのです。

 

もちろんそうでない漢字もあります。
例えば「鮴」はゴリとメバルの2種類の魚をさす漢字ですが、これは一方の地域では川底で休んでいるゴリの姿を表した会意文字としてなり、もう一方の地域では海に住むメバルにあてられた会意文字なのです。


つまり異なる地域で全く同じ漢字が生まれそれを違う魚にあてて読んでいたということなのです。


こういった特殊な例もありつつも、漢字は成長していきます。意味が変容し加わっていくのです。

そういった歴史的な背景をもっとわかりやすく解説できるよう今後も努めていきたいと思います。

 

というわけで今回は「制」という漢字を見ていきました。「制」と同じく、「刂」が部首のつくるを意味する漢字としては「創」があります。続きの記事として是非チェックしてみてください。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。ではまた次の漢字で!

 

「せり」「なずな」「おぎょう」「はこべら」「ほとけのざ」「すずな」「すずしろ」これぞななくさ!

お! 春の七草だね

うん。でも知らない野菜ばっかりだ。「すずしろ」って何?

大根のこと

参考資料

別表 学年別漢字配当表:文部科学省

 

 

 

 

 

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