【中学生の漢字】《鹿》:「麗」は鹿の角! 「鹿」の角は1本?2本?

f:id:nao-yamamoto:20191003182005p:plain【馴鹿】
突然ですが、これでなんと「トナカイ」と読みます。

馴鹿は寒い地域に住む大型の鹿で、オスメスともに大きな角を持っている動物です。赤鼻のトナカイでおなじの動物です。どうやらアイヌ語からきている名称のようで、現地の方々は鹿を食用にしただけでなく、服を作るための皮にも用いたそうです。

 

この「馴鹿」というならびはもともと「ジュンロク」と読みます。「馴」にはなれるという意味や、従うという意味があります。そのため「馴鹿」はよくなれた鹿つまり人が飼っている鹿のことを指しているといえます。

 

日本ではアイヌの方々や北方の人たちが馴鹿を飼いならし、橇(そり)をひかせていたそうなので、同じ鹿を表すこの字があてられたのではないかと思います。

 

ちなみに「馴」は見慣れない漢字のように見えて「お馴染み」や「幼馴染み」の表記に使われています。
実は知らず知らずのうちに目にしていた漢字といえるのではないでしょうか。

となかい

Orna WachmanによるPixabayからの画像

 

というわけで今回は「鹿」という漢字を見ていきましょう!

 

 

「鹿」ってどんな漢字?

しか

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【鹿】ロク・しか・か『常用字解』第2版より

 

さて、今回見ていく「鹿」は11画の象形文字です。
象形文字とは「羊」や「牛」のようにそこにあるものの形をそのまま漢字として表した文字のことを言います。「羊」や「牛」はそれぞれの顔を正面から見た姿を漢字にしたものですが「鹿」の場合は頭から尾まで身体全体を横から見た姿が漢字として表されています。

 

「鹿」にはよく見ると「广(まだれ)」のような形が含まれていますね。ですがこれは鹿の頭が変化した形であるため、「广」は「鹿」の部首ではではありません

 

漢字の部首は基本的にその漢字を構成しているものの中で主体となっている部分を言います。簡単なところを挙げれば「松」はマツの木を表している漢字ですから主体となっている部分は木です。そのため「松」は「木」が部首となります。同様に「鹿」の場合は「鹿」自体が鹿の身体全体を表しているため、「鹿」の部首は「鹿」ということになるのです。


これは動物を表す漢字のほぼすべてにいえます。「鳥」の部首は「鳥」ですし、「魚」の部首は「魚」ということです。

 

こだいもじ

「鹿」の古代文字(金文

 

そういったことも踏まえたうえで、古代文字を見てみましょう。
一番上には角が2本あり、その下にあるのは強調された「目」の形です。漢字における「鹿」の頭は大きな角と目で構成されているのです。さらに下を見ていくと首、胴、そして4本の脚が描かれてていることがわかりますね。また、後ろ脚の上方には尾があることも確認することができるでしょう。

このように「鹿」の字は鹿の身体全体が表現されているのです。


この中でいわゆる「广」の形にあたる部分は、角と目の前側です。古代文字を追ってみると鹿のここだけを切り取って部首にするのはおかしいことがわかりますよね。

 

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書き順はこのようになります。
古代文字を見てみると「鹿」のうち「广」は先にある通り角と目の前側、4から7画目が目、残りが首から下というようように考えることが可能です。

 

ここで気づいた方もいらっしゃると思いますが、古代文字では鹿の角は2本あるのに対し、「鹿」の上には角にあたるものが1本しかありません。これは変化の途中で角が省略されたのでも、折れたのでもありません。

 

現在の楷書における「鹿」は角が2本あるという考え方ではなく、角が1対あるという考え方になっています。例えば箸は2本で1膳というように数えますね。これと同じように「鹿」の角も2本で1対という表現になっています。そのため現在の「鹿」には角にあたる部分が1本しか表されていないのです。

 

「鹿」って書き順も難しければ、なりたちもややこしいね

そうだね。でもだからこそ漢字を分解して、それぞれのパーツの意味をとらえることが重要になってくるんだよ!

 

「鹿」が部首の漢字

smarkoによるPixabayからの画像

 

ここでは常用漢字ではない「鹿」が部首の漢字を見ていきましょう。


まずは「麒麟(キリン)」という漢字です。実は「麒麟」は動物園にいる首の長いキリンのことではありません。キリンビールやキリンレモンなどに描かれているあの謎の生物のように、鹿の足を持つ中国の伝説の生き物を麒麟といいます。「麒麟」は動物園のキリンと同じ音を持っていますが、基本的に漢字で「麒麟」と書く場合は伝説の生き物のほうを指しています。

 

ところで「麒麟」は2文字でその動物のことを表しますが、実は「麒」がオスの麒麟を「麟」がメスの麒麟をそれぞれ指してる漢字です。「麒麟」と同じように動物のオスとメスを漢字で区別するものとしては例えば牛があります。牛はオスの牛を「牡(ボ)」、メスの牛を「牝(ヒン)」と表わします。なので「牡牝」といえば牛を指すといえるのです。

 

このように漢字で雌雄を区別するやり方は鹿にもあり、「麌(ゴ)」はオスの鹿を「麀(ユウ)」はメスの鹿をそれぞれ指します。また「麑(ゲイ)」は小鹿のことを表しているなど「鹿」を部首とす漢字には鹿の種類を表すものだけでなく、その形態を表すものも存在しているのです。


また、「鹿」と「射」を組み合わせた会意形声文字「麝(ジャ)」は「麝香鹿(ジャコウジカ)」という身体が黒く角がない鹿の表記に使われている漢字です。「麝」にははなつ、押し出すという意味があり「麝香」は香りをはなつという熟語になります。麝香鹿はそのお腹から非常に匂いの強い分泌液を出し、採取されたそれは香料や薬に使用されるそうです。そのため麝香鹿にはこの「麝」の字が使われています。おそらく「麝」の字はこの麝香鹿を表すために作られた漢字なのでしょう。

 ちなみに母の日に送る花であるカーネーションは日本名を「麝香撫子(ジャコウナデシコ)」といい、「麝」の字が使われています。これだけで香りをはなつ撫子という意味になっていますね。

 

このほかでは「鹿」を3つ組み合わせた品字様の漢字「麤(ソ)」があります。この漢字はバラバラであるやうとい、あるいは大雑把であるというような意味を表します。これは鹿があまり群れをなさず大雑把に集まっている様子やその間がスカスカなことからきている意味だそうです。

またまた引き合いに出してしまいますが「牛」にも同じく品字様があり「犇」のように書きます。これは訓を「犇(ひし)めく」と読み、その通り牛がぎゅうぎゅうとひしめき合っている様子が表されています。同じ動物の漢字を3つ集めた「麤」と「犇」ですが意味が反対であるという点が大変面白いといえますね。

 

「牛」がぎゅうぎゅう「犇めく」って覚えやすいダジャレだね!

ダジャレじゃないよ!

 

「麗」は鹿の角

Free-PhotosによるPixabayからの画像

 

ここまでオスの鹿を表す「麌」やメスの鹿を表す「麀」など様々な漢字を紹介してきました。しかしこのような「鹿」を部首とする漢字は、そのほとんどがもはや日本では使用されていないものです。

 

そのような中で「鹿」を部首としており、常用漢字にまでなっている漢字としては「麗」と「麓」があります。

「麗」は言わずもがな「綺麗」や「華麗」に使われていますし、「麓」も「山麓」や「麓(ふもと)」として現在でも一般的に用いられている漢字です。

ここではそのなかでも「鹿」に関係の深い「麗」を見ていくことにします。

 

「麗」は「鹿」と「丽(レイ)」で構成されている象形文字です。「麗」におけるレイの音はこの「丽」からきています。そのためこの漢字を形成文字としている資料もありましたが、それではこの漢字の意味を説明することはできません。

 

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「麗」の古代文字(金文)


古代文字を見てみればわかる通り、「麗」は「鹿」の上に「丽」を置くことでその部分を強調した形になっています。つまり「麗」は2本の鹿の角を表している漢字なのです

 

「鹿」の時点では角は1対という考え方でしたが、ここでは2本の角がしっかりと表現されています。これはすなわち鹿に備わっている2本の角がきちんとそろっているということです。鹿の角がどちらか片方でも欠ければ、それはそれはみっともなく格好がつきません。角がが2本そろっているから鹿は美しいのです。

このことから「麗」にはうるわしいとか、うつくしいという意味があります。

 

また、角が2本並んでいる様子を表している「麗」にはそのままならぶという用いられ方があります。ですがこれは現在の用例にはほとんど見られません。

その代わりに「麗」ににんべんをつけた「儷(レイ)」が見られ、これにはなかま肩を並べるという意味があります。この漢字は夫婦のことを表す「伉儷(コウレイ)」や「儷匹(レイヒツ)」、あるいは雌雄の鹿の皮を表す「儷皮(レイヒ)」などに用いられています。

 

このように「麗」は鹿の頭に角がそろっているのが美しいという、大変面白い漢字です。「儷」もそうですが、鹿の角がとても象徴的に扱われていたことが、漢字から読み取みとれることでしょう。

 

 

ちなみに「儷皮」は結納品として贈られていたのだそうです。

 

まとめ

  • 「鹿」は11画の象形文字。
  • 「鹿」は鹿の身体全体を横から見た姿を現している。
  • 「鹿」の角が1つしかないのは、1本ではなく1対だから。
  • 「麗」は鹿の角を表している漢字。
  • 「麗」は鹿の角がそろっているところから、うるわしいや美しいという意味がある。

 

「鹿」っておもしろい漢字なんだなぁ!

 

おわりに

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photosforyouによるPixabayからの画像

 

今回は「鹿」という漢字でした。「鹿」が付く漢字は難しいものが多く、「鹿」の記事でした解説するチャンスのないものばかりだったため、この場でいろいろと紹介させていただきました。


「鹿」に限らず「牛」や「鳥」など動物を表している漢字は非常に面白いものです。
わたしも小学生のころからとりわけ難読な漢字を自分で探していましたが、やはり小学生なので知識がなく自然詳しくなっていくのは花や魚そして動物の漢字でした。自分が知っている動物に漢字があったときはとても面白いですし、書けた時はうれしいものです。

 

とりわけお気に入りだったのは「犀(サイ)」です。犀なのに「牛」が入っているななどと観察した思い出や「金木犀」に「犀」の字が使われていることを発見したことなどを覚えています。中学生の時には森博嗣先生の『すべてがFになる』で犀川先生の名前に驚いたりもしました。

 

自分が知っているものから漢字に興味を持っていくことは大切だと思います。いきなり「褞袍(どてら)」や「鬱」なんて漢字を見せられても面白くありませんし、興味も沸いてきません。それよりも「薔薇」や「蒟蒻」のほうが自分が知っている分意識も向きやすいように感じます。

 

そういう意味でも魚1匹1匹に、鳥1羽1羽に漢字が与えられていることはとてもありがたいことだとわたしは思います。もちろんそれは「鹿」にもいえるのです。

 

というわけで今回は「鹿」という漢字を見ていきました。ここまで読んでいただきありがとうございます。ではまた次の漢字で!

 

鹿の尻尾ってどんな感じか知ってる? 「鹿尾菜」みたいなんだよ

「鹿尾菜」? なにそれ

失礼。「ひじき」みたいなんだよ

それって鹿の尻尾がひじきみたいなんじゃなくて、ひじきが鹿の尻尾みたいってことなんじゃ…

参考資料

「白川フォント」

 

 

 

 

 

 

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