【中学生の漢字】《麗》:「麗」は何がうるわしいの? 何で「鹿」の字が入っているの?

この記事では中学生以上で習う常用漢字「麗」について紹介していきます。 「麗」はなぜうるわしいという意味があるのか、「鹿」とどういう関係があるのかなど、漢字の構成やなりたちから解説しています。

是非ご自身の目で確認してみてくださいね!

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「麗」ってどんな漢字?

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【麗】レイ・うるわしい『常用字解』第2版より

 

さて、今回見ていく「麗」は19画の象形文字です。象形文字とは「米」や「皿」のようにそこにあるものの形をそのまま漢字として表した文字のことを言います。「米」は実が稲穂になっている様子を「皿」は平たいお皿の形をそれぞれ表している漢字ですが、「麗」の場合は鹿、とりわけオスの鹿を表している漢字です。

 

オス鹿にあってメス鹿にないものといえば、角です。「麗」は漢字の構成として「鹿」と「丽(レイ)」という文字が組み合わさってできており、この「丽」が鹿の角を象形しています

 

また、「鹿」という漢字は、鹿の頭から脚までを横から象形した、鹿の全身を表す漢字です。「鹿」の上部には「广(まだれ)」のような形がありますが、この部分がちょうど鹿の頭と目の一部を指しています。なので、「广」のさらにその上部にならんでいる「丽」が鹿の角を表しているということになるのです。

 

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「鹿」の古代文字(金文


「丽」が鹿の角を表していることを踏まえたうえで古代文字を見てみましょう。すこしわかりづらいものの、上部にある謎の模様のようなものが「丽」であることは読み取れますね。それ以下は鹿の全身を横から見た形です。「丽」が鹿の頭からしっかりと生えてるのがわかります。これが鹿の角を表わしているということになります。

 

このことから「麗」は角の生えた鹿、つまりオス鹿の象形文字であるといえるのです。

 

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書き順はこのようになります。大変複雑なようですが、「鹿」の上に角があると覚えてしまえば、だいぶ覚えやすい漢字です。

 

漢字はひと塊で見るのではなく、分解して覚えていくことが大切です。

例えば「薔薇(バラ)」の「薔」です。わたしはこの漢字を「艹(くさかんむり)」に「土」のなか「人」2つ「回」ってると覚えていました。「薇」は「艹」に微妙の「微」なので、「薔薇」が自然に覚えられるというわけです。

なので「麗」も「鹿」と「丽」にばらして、覚えやすくしてしまいましょう。

 

「麗」はちゃんと「鹿」の字を理解していないと難しいね

そうだね。「鹿」と「麗」に限らず、漢字はいろいろなところで繋がっているから、そのつどなりたちを見ていくことが大切だよ

 

「麗」は角がそろっているから美しい

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ここまでで「麗」がオス鹿を象形している文字であることはわかりました。


ですがわたしたちが普段「麗」の字を使う場合、その意味は「美しい」であるとか「うるわしい」という意味になるはずです。

では、なぜ「麗」には「うつくしい」や「うるわしい」という意味があるのでしょう。 

 

ではまず、想像してみてください。片方が欠けたり折れてしまったりして、角が1本しかない鹿がいたとします。あるいは両方の角が木の株のようになってしまっているオス鹿がいたとします。いかがでしょう。とてもみっともなく、格好の悪いことになってしまいますね。

 

これはもちろん現実にいる鹿にもいえることで、オス鹿の角はきちんと角が2本揃っているからこそ格好いいのです。当時の人たちはそのように2本揃った鹿の角を美しいものであると表現しました。

 

このことから「麗」には「美しい」や「うるわしい」という意味があります。現在の「麗」は美しい女性を表すことばである「華麗」や「美麗」などに用いられていますが、もともとは鹿の角が2本揃っていて美しい、ということを表している漢字だったのです。

 

鹿の角が揃っている様子を文字にして、その字に「うるわしい」という意味を与えたんだ!

なかなか粋だよね

 


「麗」の字はそのほか、「麗人」や「麗姿」など美しい見た目に対して使われている一方で、これを組み合わせた漢字にも多くの使用例が見られます。

 

例えば「驪(リ)」という漢字です。「麗」しい「馬」と書くこの漢字は、馬の中でもとりわけ黒馬のことを指しており、黒い馬の鬣(たてがみ)がそろって美しいさまを表しています。なぜ、黒馬のみに限定するのかは不明ですが、確かに馬の鬣がそろっていたら美しいと感じますよね。

 

また、「麗」しい「鳥」と書く「鸝(リ)」という漢字は、鶯(うぐいす)を表す漢字です。この漢字自体は「黄鸝」と書いてチョウセンウグイスを表すのが一般的なようで、用例でもほとんどこの熟語が紹介されています。日本に生息している濃い緑色をした鶯も大変綺麗なものですが、チョウセンウグイスははさらに胸の毛の黄色と嘴(くちばし)の赤が加わっているため大変鮮やかな鳥になっています。

 

このように「麗」は当初鹿の角が美しいことを表している漢字でしたが、現在では鹿の角を離れ様々な動物やものの美しさを表す文字となっているのです。

「麗」は角が「並」は人がならんでいる

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「麗」は鹿の角を表しそこから「うるわしい」の意が出来上がった漢字ですが、「麗」にはもうひとつ「ならぶ」という意味があります。これは「麗」の上の「丽」を見ればわかるように、角が綺麗にならんでいる様子からその意味が付いているのです。

 

この「ならぶ」という意味も「うるわしい」などと同じように、鹿の角が欠けずに揃っている様子からきていることが想像できるでしょう。

 

しかし「麗」におけるこの意は現在ではほとんど使用例が見られず、その代わりに「麗」ににんべんを付けた「儷」が使われるようになっています「儷」は夫婦のことを表す「伉儷(コウレイ)」や「儷匹(レイヒツ)」など「ならぶ」という意味のほか、そこから転じて「対をなす」「2つのもの」という意味で用いられています。

 

ところで、「麗」など同じく「ならぶ」という意味を持つ漢字としては「並」がありますね。

「並列」や「並行」のように「ならぶ」という意味を表す場合には、この「並」のほうが一般的に使われているということは言うまでもありません。では、なぜ「並」は「ならぶ」という意味を持っているのでしょう。

 

そもそも「並」は現在の漢字になる前は「竝(ヘイ)」のように「立」という漢字を2つ並べた字形でした。「立」は文字通り、人が地面の上に立っている様子を正面から見た形を表しています。そのため「竝」は地面に2人の人が並んで立っているところから「ならぶ」という意味の漢字としてなりたったのです。

いわゆる新字体になる過程で「竝」は「並」という字形になったものの、「並」は現在でもそのまま「ならぶ」という意味で用いられています。

 

同じ「ならぶ」という意味を持っていても、「麗」は鹿の角がならんでいる姿を、「並」は人が2人ならんでいる姿をそれぞれ表しており、なりたちが全く異なることがその字形からわかるのです

 

そのなかでも「並」が一般的に「ならぶ」の意味として使用されている理由は定かではありません。考えられるものとしては「麗」が「うるわしい」という意味をメインに用いられているため「並」を用いたというものや、単純に鹿よりも人のほうが多く見るからというものが挙げられるのではないでしょうか。

 

ちなみに「麗」のならぶという意味を用いている漢字には「欐(リ)」があったよ。屋根の梁がきれいにならんでいる様子を指すんだって

うーん、あんまりピンと来ないね

 

まとめ

  • 「麗」は19画の象形文字。
  • 「麗」はオスの鹿をかたどっている漢字。
  • 「麗」には鹿の角がそろっていて美しいという意味から「うつくしい」や「うるわしい」という意味がある。
  • 「麗」は鹿の角がならんでいる様子から「ならぶ」という意味がある。
  • 「並」はもとの漢字を「竝」のように書き、人が2人ならんでいる姿から「ならぶ」という意味になった。

 

「並」との関連は意外性があって面白いなぁ

 

おわりに

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上記にもあるように「麗」という漢字は「鹿」と「丽」が組み合わさることでなりたっている漢字です。 


「丽」はそれ単体でレイという音を持っているため、資料の中には「麗」を形声文字とするものもありましたが、それでは「麗」のならぶやうるわしいの意味を説明することはできません。「丽」が鹿の角を表さなければ、ならぶやうるわしいという意味に繋がっていかないからです。

 

途中わたしは「「麗」って形声文字でも象形文字でもなくて指事文字なんじゃないの?」と疑問を持ちました。ですが結論から言えばそれは間違いであるようです。「鹿」の上に「丽」がある関係で頭部を指事しているように見えますが、「鹿」の上に「丽」があっても結局は鹿の全身を象形していることに変わりないからです。

 

この記事を書く際、六書の分類についてはだいぶん悩んだのですが、結果的には徒労に終わりました。とはいえこの懊悩が無駄だったとは思いません。何も考えずただ資料に書いてあることを丸写ししてもこの記事にオリジナリティは生じませんし、自分の身にもつきません。考えて納得できたからこそ、この記事があります。これからもこうして悩んで、自分で選択して、皆さんにわたしなりの漢字記事をお送りできれば良いと思います。

 

というわけで今回は「麗」という漢字を見ていきました。ここまで読んでいただきありがとうございます。ではまた次の漢字で!

 

今回は形声文字だったから紹介しなかったけれど、魚へんに「麗」と書いて「鱺(レイ)」という漢字があったよ。なんと30画!

30画!? すごいね! どういう意味があるの?

それがパッとしなくてね。これに「鰻(うなぎ)」を組み合わせて、「鰻鱺(バンレイ)」のように用いるんだけれどこれも鰻を表すんだって

…よくわかんないけど「鮟鱇(アンコウ)」みたいな感じなのかしら

続きの漢字

「麗」は先にも述べたように「鹿」と「丽」を組み合わせた漢字です。「鹿」の記事を読むとさらに理解を深めやすくなるはずです。是非続きの記事としてご覧ください。

 

 

参考資料

「白川フォント」

 

 

 

 

 

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